大阪地方裁判所 昭和33年(ワ)1519号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は、昭和三一年五月二二日、被告甲との間に本件建物につき代物弁済一方の予約を締結し、同月二三日、右予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を受けたのち、昭和三三年三月二九日、被告甲に対し右予約完結の意思を表示し、本件建物の所有権を取得した。一方、被告乙及び被告丙は、昭和三一年一〇月被告甲から本件建物(乙は二階全部と一階の一部、丙は一階の残部)を賃借し、同日以降これを占有している。そこで原告は、被告甲を相手に、右仮登記に基く所有権移転本登記手続の履行を訴求するとともに、被告乙、丙を相手に、「右甲に対する判決確定後その所有権移転の本登記をなしたるときは、原告に対し、本件建物中各占有部分を明渡すべし」との趣旨の判決を求める訴を提起した。
右、被告乙、丙に対する請求についての裁判所の判断は次のとおりである。
「原告は別紙目録(一)記載の建物の所有権を昭和三三年三月二九日に取得したのであるが、昭和三一年五月二三日に仮登記により順位が保全されているのであるから、右仮登記に基づいて本登記がなされたときは、右仮登記後である昭和三一年一〇月に取得した被告乙、同丙の賃借権は否認されるものと解するを相当とするけれども、仮登記のままでは右のごとき効力を認めることはできない。しかし、本件におけるごとく、すでに本登記手続請求訴訟を提起し、この訴訟と併合されている事件については、あらかじめその請求をなす必要があると認められ、かつ、原告が右本登記手続をなすことを命ずる判決の確定後その本登記をなしたことを条件として被告らに対し本件建物のうちの各占有部分の明渡を求めうると解すべきである。そこで原告の本訴請求の必要性について考えると、被告乙、同丙は原告の請求を争つているのであり(注・原告主張の事実中、原告と被告甲間の代物弁済予約の有無は関知しないと述べ、請求棄却の判決を求めている。)、この場合、まず本登記請求訴訟の結果、原告が勝訴して本登記を経由した後、あらためて右被告らに対し明渡請求の訴を提起せねばならぬとすることは、事案の性質上原告がその目的を達するため相当の日数を要する結果となり、原告にとつて酷というべきであるから、原告は明渡請求を予めする必要を有するものというべきである。そうだとすると、結局、原告の被告乙、同丙に対する本訴請求も正当である。」
かくして、裁判所は、主文第一項において被告甲に対し前記所有権移転本登記手続の履行を命じるとともに、主文第三項において、「原告が、主文第一項の判決の確定後その所有権移転の本登記をなしたるときは、原告に対し、被告乙は別紙目録(一)記載の建物のうち同(二)記載の部分を、被告丙は同(三)記載の部分をそれぞれ明渡すべし。」との判決をした。